東京高等裁判所 昭和28年(う)4091号 判決
被告人 佐々木福雄
〔抄 録〕
弁護人の控訴の趣意第二号について。
論旨は、原判決は審判の請求を受けない事案について判決をした違法がある、というのである。よつて按ずるに原審第二十一回公判調書の記載によれば、検察官が本件公訴事実中第二の事実(遊興その他費消横領の点)について昭和二十五年七月頃より同二十六年二月迄とあるのを昭和二十五年七月頃より同年十二月九日頃までと訂正し、なお費消横領を着服横領と訂正していることは所論のとおりである。しこうしてかかる場合費消横領の訴因を判決において着服横領と認定するには通常訴因変更の手続を要することは所論のとおりであるが、記録によれば本件においては検察官の前記訂正の申立につき原審弁護人はこれに同意しているのであるから、右の変更につき敢えて訴因変更の手続に出る必要もなく、また検察官は訂正というけれども、その実質は何ら訴因の変更と異ならないのであるからこれを訴因変更の申立と解することも敢えて差支はないものというべきであるのみならず、原審がたとえ所論のごとく、訴因変更の手続を経ないで訴因と異なる事実を認定したとしても、原判決の認定した事実と本件被告人に対する公訴事実とは公訴事実の同一性を害しないことは疑を容れないところであつて、裁判所が公訴事実に示された訴因と異なる事実を認定しても公訴事実の同一性を害していない限り審判の請求を受けない事件について判決したものということはできないのであるから所論は到底採用し難い。所論引用の高松高等裁判所の判決は右と全く同趣旨であつて、原判決には何ら失当の点は存しないから論旨は理由がない。